フローティングスタティックルートとは、Ciscoコンフィグ設定:従来と現在の利用例

フローティングスタティックとは、ダイナミックルーティングプロトコルでルート情報が受信できなくなった場合に、AD値を調整したスタティックルートでトラフィックを救済する技法のことです。人によっては、略して「フロスタ」と言っている方もいらっしゃいます。

デフォルトでは、スティックルートのAD値は「1」となっていることから、ダイナミックルーティングプロトコルによって学習したルート情報よりもスタティックルートは優先されます。そこで、スタティックルートのAD値を、ダイナミックルーティングプロトコルのAD値よりも大きな値に設定することで、そのスタティックルートはダイナミックルーティングプロトコルからルート情報を受信できなくなった場合にトラフィックを救済することができます。

この種のスタティックルートは「フローティングスタティックルート」と呼ばれており、このスタティックルート情報は、ルーティングテーブルにダイナミックルート情報が消失した場合にだけ、ルーティングテーブルにインストールされます。

フローティングスタティックの設定:従来の主流な利用例

フローティングスタティックルートは、従来のWAN構成ではISDNをバックアップ回線として使用していたネットワークでよく利用されていました。

ISDN回線をご存知でない方にとっては、上図の構成なら主回線と副回線ともにダイナミックルーティングプロトコルを動作させればいいのではないかと考えてしまうかもしれません。

しかし、従量課金のサービスであった場合、普段は使用しないのにトラフィックを流すのは、コスト面から非常に問題であることが分かるかと思います。そのため、上図のような過去のWANではフローティングスタティックルートとダイヤルオンデマンドルーティングがセットでよく実装されていました。なつかしいですね。

フローティングスタティックの設定:現在の主流な利用例

フローティングスタティックが、AD値の高いスタティックルートを設定することで実現できるバックアップの手法という観点から、IP SLAの機能と併用してAD値を設定するスタティックルートについても、フローティングスタティックルートと言えることができます。

本記事の冒頭で、フローティングスタティックルートはダイナミックルーティングプロトコルでルート情報が受信できなくなった時にAD値を調整したスタティックルートでトラフィックを救済する技法と紹介しましたが、ダイナミックルートに関係なく、あるスタティックルートのルート情報がルーティングテーブルから消失した時にもフロスタを利用することができます。

はじめて実装する方は少し複雑に感じてしまうかもしれませんが、一度でも経験すればとても簡単な仕組みであることを理解できるかと思います。

詳細については、IP SLA – Object Trackingによる経路のバックアップとその設定例として、IP SLA – Object Trackingによる経路バックアップの設定例とコマンド解説をご参考頂ければと思います。

もちろん、この記事で書いた以外の手法でフローティングスタティックルートは実装することができます。要するに、AD値を調整したスタティックルートを潜伏させてバックアップ経路を生成させておきたい時に実装する手法です。

なお、企業LANネットワークで実装する場合は必ず双方向通信を意識して実装させましょう。

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