Integrated IS-IS <第6回> NSAPアドレス

NSAP(Network Service Access Point)アドレスとは

Integrated IS-ISでは、IPアドレスを端末の識別用のアドレスとして使用しますが、ルーティング自体はOSIのCLNSのアドレス体系であるNSAPというアドレスを使用します。

Integrated IS-ISであるから「IPが使える、IPだけで良い」というわけではなく、基本的なルーティング方式はIS-ISであることから、各ルータにはNSAPアドレスを設定する必要があります。Integrated IS-ISでは、NSAPアドレスでルータを識別したり、各ルータがトポロジーテーブルを作成することができます。

NSAPアドレスの構成

NSAPアドレスは「エリアID」「システムID」「NSEL」の大きく3つによって構成されます。NSAPアドレスのフォーマットは次の通りです。

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・ AFI(Authority and Format Identifier)
⇒ グローバルIPアドレスのように、ISPや企業ごとに決められたアドレスを使用する。 ※1

・ IDI(Initial Domain Identifier)
⇒ ドメインを識別する情報。

・ HO-DSP(High Order Domain Specific Part)
⇒ ドメインをエリア分割した場合の識別に使用する情報

・ System ID
⇒ デバイスを識別する情報。ルータのMACアドレスまたはIPv4アドレスを使用する。

・ NSEL
⇒ 上位プロトコルを識別するために使用する情報。N-selectorとも呼ばれる。※2

※1 AFIに 0x49 を指定した場合、プライベートアドレスであることを表している。
※2 NSELはNSAPデバイス自体を示す 0x00 を通常は使用する。

◆ When the N-selector is set to zero, the entire NSAP is called a network entity title (NET).

英文でも以下の点( three partsが意味するもの )について理解しておきましょう。

The NSAP is divided up into three parts as specified by ISO/AI 10589.

・ Area ID
・ System ID
・ NSAP Selector

NSAPアドレスの割り当て

それでは、具体的にNSAPアドレスを見てます。NSAPアドレスは16進数表記でありますが、その区切りにはコロン(:)ではなくドット( . )を使用します。

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49.0001.1111.2222.3333.00 というNSAPアドレスとなりますが、以下の意味となります。エリアIDだけ「AFI」と「IDI、HO-DSP」の間を( . )で区切る表記となります。

・ 49 ⇒ AFI。プライベートアドレスであることを示す。

・ 0001 ⇒ IDIとHO-DSP。

・ 1111.2222.3333 ⇒ System ID。

・ 00 ⇒ NSEL。NSAPデバイスそのものを示す。

NSAPアドレッシングで、以下のNSAPアドレスの割り当てルールを覚えておきましょう。

・ 同じエリア内では、ISとESは同じエリアIDを使用する。

・ 同じエリア内では、ISとESは異なるシステムIDを使用する。

・ エリアが異なる場合は、同じシステムIDを使用しても問題ない。

・ エリアごとに、異なるエリアIDを割り当てる。

・ バックボーンに所属するレベル2ルータのシステムIDは重複してはいけない。

NSAPアドレスは、インターフェースごとに異なる値を設定するのではなく、デバイスごとに1つ割り当てす。そのため、Integrated IS-ISでは、OSPFのABRのように複数のエリアに所属することなく、必ず1つのエリアに所属することになります。

最後に、NSAPアドレスの割り当て例を見てみましょう。

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Integrated IS-ISでは、「CLNS」または「IP」または「その両方」をルーティングできるということを、次回解説するIntegrated IS-ISのコンフィグ設定で理解することにしましょう。

参考:System IDにIPアドレスを使用する場合のConversion

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System IDにloopbackインターフェースのIPアドレスを使用する場合のConversionプロセス

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