キヤノン:世界最高出力の小型テラヘルツデバイス開発、6G通信などへ応用が期待

次世代センシングや6Gなどの情報通信などの分野で活用が期待されるテラヘルツ技術ですが、キヤノンが世界最高出力と高志向性を両立したテラヘルツデバイスを開発したようです。


2023年1月16日 キヤノン株式会社 ニュースリリース
世界最高出力の小型テラヘルツデバイスを開発、セキュリティや6G通信などへの応用が期待

キヤノンは、これまで培ってきた半導体デバイスの設計技術と製造技術により、世界最高出力と高指向性を両立した小型のテラヘルツデバイスを開発しました。テラヘルツ技術は、将来、次世代のセンシングや情報通信などの分野に活用されることが期待されています。

テラヘルツ波は、電波と光の中間の周波数(波長)を有し双方の特性を併せ持つ電磁波です。

また、現在広く使われているX線と異なり、被ばくすることなく物体を透過させることができます。その性質を活かし、ボディースキャナーなどのセキュリティ用途では、遊園地やイベント会場など多くの人が通る入口において、人流を止めることなくセキュリティ対策を行うことが期待されます。

さらに、次世代の通信方式とされる「6G」の実現に向けても活用が検討されており、高速・大容量通信の実現に貢献できることが見込まれます。キヤノンが開発した新しいデバイスは、テラヘルツ波をより強く、狙った方向により遠くまで送ることができるため、幅広い分野での技術革新と製品開発に寄与し、テラヘルツ波を用いた産業の発展や社会の変革に貢献します。

1. 従来方式と比べて大幅な小型化を実現

テラヘルツ波を発生する装置は、高い出力を確保すると発生装置全体が大きくなることが課題となっていました。キヤノンが開発したデバイスは、共鳴トンネルダイオードを用いた方式で、半導体とアンテナを一体集積したアクティブアンテナからテラヘルツ波を放射することが特徴です。

このため、従来方式で使用されていた逓倍器などの部品が不要となり、発生装置において約1000分の1の小型化を実現しました。

2. 450ギガヘルツのテラヘルツ波において世界最高出力が可能

これまで、RTDを用いた方式は小型化ができる一方で、出力が低いことが課題でした。そこでキヤノンは、1個の半導体チップに36個のアクティブアンテナを集積したアクティブアンテナアレイの開発に成功し、全てのアンテナの出力を合成することにより、従来比で約10倍となる世界最高出力を実現しました。

3. アンテナアレイの同期により高い指向性を実現

従来、アンテナから放射されたテラヘルツ波は、拡散し遠くまで届かないことが課題の一つでした。キヤノンは、レンズなどの光学部品を使うことなく、独自の設計技術により全アンテナを同期させることで、単一アンテナのデバイスと比べて約20倍となる高い指向性を実現しました。これにより、遠距離での撮影や通信をコンパクトなサイズのデバイスで行うことが可能となります。

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